筐体機構

板金筐体の設計方法、曲げ加工・溶接・リベット留めの使い分けと設計制約

板金筐体の設計方法、曲げ加工・溶接・リベット留めの使い分けと設計制約

板金筐体の設計方法、曲げ加工・溶接・リベット留めの使い分けと設計制約

試作品が形になり、いよいよ製品として市場に出す段階で、多くの人が直面するのが「筐体」の壁です。機能やデザインは固まっても、いかに安全に、効率的に、そしてコストを抑えて量産できる筐体を作るかは、製品化の成否を分けます。特に、金属製の筐体を検討する際、板金加工は非常に有力な選択肢です。

板金筐体のメリットと選ばれる理由

板金加工は、金属板を切断し、曲げ、溶接、接合などを組み合わせて立体的な形状を作る工法です。金型を必要とする射出成形に比べて初期投資を抑えやすく、加工の自由度も高いのが特徴です。特に、以下のようなメリットから多くの製品で採用されています。

  • 軽量性: 薄い金属板を使用するため、比較的軽量な筐体が実現できます。
  • 低コスト: 少量生産であれば金型不要で加工できるため、初期コストを抑えられます。
  • 強度・耐久性: 金属素材ならではの強度と耐久性を持ち、外部からの衝撃や環境変化に強い筐体が作れます。
  • 放熱性・シールド性: 金属の特性を活かし、内部の熱を効率的に放熱したり、電磁波をシールドしたりする効果も期待できます。

これらのメリットを最大限に活かすためには、板金加工ならではの設計ルールを理解しておくことが不可欠です。

板金加工の基礎:曲げ・溶接・リベット留めの使い分け

板金筐体を構成する主要な接合方法には、曲げ加工、溶接、リベット留めがあります。それぞれの特性を理解し、適切に使い分けることが重要です。

曲げ加工

一枚の板金を折り曲げて形を作ることで、部品点数を減らし、組み立て工数を削減できます。R形状や角度を正確に出すことが可能で、設計の自由度も高い方法です。ただし、後述する設計制約を考慮する必要があります。

溶接

金属同士を熱で溶かし、一体化させる接合方法です。高い強度と密閉性が得られ、外観をすっきりとさせたい場合にも適しています。しかし、熱による歪みが生じやすく、加工後の表面処理が必要になることもあります。

リベット留め

リベットと呼ばれる金属製の鋲を使い、板金を機械的に接合する方法です。溶接と異なり、分解や修理が比較的容易で、異なる素材の板金を接合する際にも使えます。ただし、リベットの頭が外側に出るため、デザイン上の制約や、防水・防塵性を確保しにくい場合があります。

これらの工法は単独で使うだけでなく、製品の要求仕様に合わせて組み合わせて使うのが一般的です。

板金曲げ加工の設計ルールと注意点

板金加工で最も頻繁に行われるのが曲げ加工です。しかし、この曲げには守るべき設計ルールがいくつかあります。

最小曲げ内Rと板厚の関係

板金を曲げる際、内側には必ずR(アール)が付きます。この「曲げ内R」は、板厚に対して小さすぎると、曲げた部分にクラックが入ったり、金型に過度な負荷がかかったりする原因になります。一般的に、最小曲げ内Rは板厚の0.5倍から1.0倍以上に設定することが推奨されます。特に硬い材料や厚い板厚の場合は、1.0倍以上を確保する方が安全です。板厚が薄くても、Rが小さすぎると「シャープエッジ」と呼ばれる鋭利な角になり、安全性や塗装の乗りにも影響します。

曲げ逃がし(ノッチ)の重要性

板金で箱状の形状を作る際など、複数の曲げが近接する箇所では「曲げ逃がし」と呼ばれる切り欠きが必要です。これは、曲げたときに材料が干渉して歪んだり、破断したりするのを防ぐためです。逃がしがないと、曲げ線の端にひび割れが発生しやすくなります。適切な形状と寸法で逃がしを設けることで、きれいな曲げ加工が可能になります。

曲げによる伸びと展開図の作成

板金を曲げると、材料は外側に伸び、内側は圧縮されます。この「曲げ伸び」を正確に考慮しないと、組み立てたときに寸法が合わなくなります。製品の設計では、まず三次元CADで完成形状を作成し、そこから曲げ伸びを計算して平面の「展開図」を作成します。この展開図が、実際のレーザー加工やタレパン加工のデータとなります。展開図の作成には、材料の特性に応じた「Kファクター」などの曲げ補正係数を正確に適用することが重要です。

板金筐体における部品取り付け・結合の工夫

筐体に基板や他の部品を取り付ける際、板金加工ならではの工夫が求められます。

タップ穴とバーリング加工

板厚が薄い場合、直接タップを切るとネジ山が少なくなり、強度が不足しがちです。この問題を解決するのが「バーリング加工」です。板に穴を開け、その周囲を円筒状に引き起こすことで、板厚方向の長さを増やし、より多くのネジ山を切れるようにします。これにより、薄板でも十分なネジ強度を確保できます。ただし、バーリング加工には最小限の板厚と穴径の制約があります。

スポット溶接の設計

スポット溶接は、2枚の金属板を重ね合わせ、電極で挟んで大電流を流すことで局所的に溶融させ、接合する加工です。短時間で接合でき、コストも比較的安価なため、量産品で広く使われます。設計上の注意点としては、溶接点の間隔や、板の端からの距離(フランジ幅)を適切に確保することです。これらが不適切だと、溶接不良や板の歪みにつながります。また、溶接箇所に電極がアクセスできる形状にすることも重要です。

正確な展開図の作成は製品化の肝

前述の通り、板金加工の起点となるのは展開図です。三次元CADで設計したものをそのまま加工に出せるわけではありません。材料の物理的特性(板厚、材質、硬さ)と加工方法(金型の種類、プレス機械の精度)によって、曲げたときの伸び方は変わります。この伸びを適切に計算して平面の展開図を作成できなければ、寸法が合わない、組み立てられないといった問題が発生し、手戻りやコスト増に直結します。

特に、試作段階では手作業での調整ができたとしても、量産に入るとそうはいきません。正確な展開図は、加工現場でのスムーズな生産、品質の安定、そしてコスト管理の基盤となります。

サイコス・ジャパンでの製品開発支援

当社サイコス・ジャパン株式会社は、1990年の創業以来35年にわたり、様々な電子機器の製品開発を支援してきました。機構設計から電子回路、組み込みソフト、クラウド、そして量産まで、製品づくりの全工程を一社で取りまとめています。

特に、試作段階の製品を製品化する段階で、筐体設計は重要な課題の一つです。当社では、お客様が持ち込まれた試作品の機能やデザインを拝見し、どのような加工方法が最適か、コストや量産性を考慮した上で最適な板金筐体の設計を提案します。例えば、QuickAccessやプラグアロマ、intiといった累計100万個を超える出荷実績を持つ製品では、量産を見据えた設計が不可欠でした。板金加工の特性を踏まえた設計で、品質とコストのバランスが取れた製品化を支援します。

これから製品を作りたい方や、試作はできたものの製品化で困っている方は、ぜひ一度ご相談ください。初回相談は無料です。試作品をお持ちの方は、写真と経緯のメモだけでも構いませんので、まずご相談ください。

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