ハード・ソフト・機構・クラウドを一人が取りまとめる意味、専門分野に分かれた開発の落とし穴
試作品が形になり、いよいよ製品化へ向けた開発を進めようとしたとき、多くの企業が直面する課題があります。それは、専門家を分野ごとに集めて開発を進めても、なぜかうまくいかない、という状況です。組み込みソフトは組み込みソフトだけ、回路は回路だけ、筐体は筐体だけと、それぞれの専門家が自分の領域で最善を尽くしても、製品全体として見たときに整合性が取れず、手戻りやコスト増が発生しがちです。
専門分野に特化した開発が抱えるリスク
製品開発は、機構設計、電子回路設計、基板設計、組み込みソフト開発、クラウド連携、そして量産といった多岐にわたる工程から成り立っています。それぞれの工程には高度な専門知識が必要なため、多くの場合は専門の技術者が担当します。
しかし、各分野の専門家が自分の領域だけを最適化しようとすると、他の分野との連携がおろそかになることがあります。例えば、機構設計者はデザインや組み立てやすさを重視し、電子部品の配置スペースや放熱を十分に考慮しないかもしれません。電子回路設計者は、回路の性能を追求するあまり、筐体への収まりやアンテナの性能、組み込みソフトからの制御のしやすさを後回しにしてしまうケースがあります。
このような状況では、各専門分野の間に「つなぎ目」が生まれてしまい、そのつなぎ目の責任者が不在になりがちです。結果として、開発の後半になってから大きな問題が発覚し、大幅な設計変更やコスト超過につながります。
取りまとめ役がいない場合に起きる典型的な失敗
各専門分野の要所を把握し、全体を俯瞰する取りまとめ役がいない場合、製品開発では以下のような典型的な失敗が起こります。
設計の手戻りとコスト増
機構設計が完了し、金型製作の段階になってから「この基板ではここに収まらない」「コネクタが干渉する」といった問題が発覚することがあります。これは、機構と回路・基板設計の連携が不足していたために起こる典型的な手戻りです。日本で金型を1型起こすにはおよそ100万円かかることが目安とされており、このような手戻りは開発コストに大きな影響を与えます。また、3Dプリントで機能試作ができたとしても、量産に向けた設計では、材料の選定や組み立てやすさ、コストを考慮した工法(射出成形など)への移行が必要です。機能試作と量産品では求められる品質や製造方法が大きく異なるため、試作段階から量産を見据えた全体像が必要です。
性能の低下と品質問題
例えば、無線通信機能を搭載するIoT製品では、アンテナの配置が機構設計によって大きく左右されます。しかし、機構設計者が電波特性を考慮せずにデザインを優先すると、通信性能が著しく低下する場合があります。また、熱設計が不十分なまま製品化が進むと、製品が異常発熱したり、部品の寿命が短くなったりする原因になります。これは、回路設計と機構設計、そして組み込みソフトによる制御の連携が不足しているために起こる問題です。
量産性の欠如と認証取得の困難
試作段階では手作業で組み立てていたものが、量産段階になると組み立て工数がかかりすぎたり、不良品が多発したりすることがあります。これは、設計段階で量産工程を考慮していなかった場合に起こりがちです。また、電波法(技適)や電気用品安全法(PSE)、欧州のCEマーキングなど、製品の販売に必要な認証は、設計段階から要件を満たすように進める必要があります。特に無線機器や電源を必要とする製品は対象になることが多く、製品ごとに確認が必要です。最新の情報は所管機関で確認してください。取りまとめ役がいないと、これらの認証要件が設計に反映されず、後から大規模な設計変更が必要になり、製品化が大幅に遅れる原因になります。
製品を成立させるために全分野の要所を把握する意味
製品開発を成功させるためには、各専門分野の深い知識はもちろんのこと、それらを統合し、全体として最適な判断を下す「取りまとめ役」が不可欠です。この取りまとめ役は、各分野の技術者と同等レベルの専門知識を持つ必要はありませんが、それぞれの分野が持つ制約や要求、そして相互作用を理解し、製品全体が目指すゴールを見失わないように調整する役割を担います。
具体的には、機構設計の初期段階で電子部品の配置や熱設計の要件を伝え、回路設計では組み込みソフトとのインターフェースや量産時の部品調達のしやすさを考慮に入れます。クラウド連携においても、デバイス側のデータ形式や通信負荷がバックエンドに与える影響を把握し、全体としてスムーズな連携を実現します。
この役割を担う人がいることで、開発の初期段階で潜在的な問題を特定し、手戻りを最小限に抑えることができます。また、各分野の技術者が自分の専門領域に集中しつつも、全体最適を意識した開発を進めることができるようになります。
サイコス・ジャパンの製品開発支援
サイコス・ジャパン株式会社は、1990年の創業以来、35年にわたり製品開発に携わってきました。当社では、機構設計・電子基板設計・組み込みソフト・クラウド・量産・OEM支援・拡販支援まで、製品づくりの全工程を一社でまとめています。さらに、担当者が同じ拠点にいるため、各分野の技術者が密に連携し、全体最適を考慮した開発を進めることができます。
他社や個人、フリーランスの方が作った試作品の持ち込みを受け、製品化する仕事も多く手掛けてきました。その経験から、専門分野に分かれた開発で生じる課題や、つなぎ目の責任者がいないことによる失敗を熟知しています。小ロット(数百個〜)からの量産にも対応しており、台数に応じた最適な作り方や、金型・オリジナル基板への投資判断など、お客様の状況に合わせたアドバイスを提供します。技適・PSE・CEなどの認証取得も設計段階から支援し、スムーズな製品化をサポートします。
製品開発は多くの要素が絡み合う複雑なプロセスです。試作品を製品として市場に送り出すためには、個々の技術力だけでなく、それらを統合し、全体を管理する視点が不可欠です。
試作品をお持ちの方は、写真と経緯のメモだけでも構いませんので、まずご相談ください。初回相談は無料です。