CE認証取得の基本手順、欧州向けIoT製品で必要なRED・LVD・EMCの対応方法
試作品はできた。次は欧州でも売りたい。そう考えて調べ始めると、最初にぶつかるのがCEマーキングです。
CEマーキングは、欧州連合(EU)加盟国に製品を流通させるために必須の適合性表示です。このマークがないと、どんなに良い製品でも欧州市場で販売することはできません。特にIoT製品のように無線通信機能を搭載している場合、対応すべき指令が複雑になりがちです。
ここでは、無線機能を持つIoT製品に関わることが多い無線機器指令(RED)、低電圧指令(LVD)、EMC指令の3つを中心に、認証取得の流れと、スケジュール・費用の目安を設計者の視点で整理します。
CEマーキングがIoT製品開発で重要になる理由
CEマーキングは、製品がEUの安全、健康、環境保護に関する指令(要求事項)に適合していることを示す証です。このマークが付いていることで、製品がEU域内で自由に流通できることになります。これは、消費者の安全を守るだけでなく、メーカーにとっても市場へのアクセスを保証する重要な制度です。
特にIoT製品は、無線通信機能を持つことが多く、電波を発することから、適用される指令が複雑になりがちです。無線機能を持つ製品は、電波干渉や人体への影響、電気的安全性が厳しく問われます。そのため、製品開発の初期段階からCEマーキングの要件を考慮に入れることが、スムーズな製品化への鍵となります。
IoT製品で必須となる主要3指令:RED、LVD、EMC
IoT製品、特に無線通信機能を搭載した製品の場合、主に以下の3つの指令への適合が求められます。
1. 無線機器指令(RED: Radio Equipment Directive)
RED指令は、無線通信機能を持つあらゆる機器に適用される指令です。スマートフォン、Wi-Fiルーター、Bluetoothデバイス、そしてIoT機器全般が対象となります。この指令は、単に無線性能だけでなく、以下の4つの要素をカバーしています。
- 無線スペクトルの効率的な利用(電波法規適合性)
- 電気的安全(LVD指令に相当)
- 電磁両立性(EMC指令に相当)
- 人間の健康保護(SAR値など)
つまり、RED指令への適合は、LVD指令とEMC指令の一部要件も満たすことを意味します。そのため、無線機器の場合はRED指令を軸に認証を進めることが一般的です。
2. 低電圧指令(LVD: Low Voltage Directive)
LVD指令は、交流50V~1000V、直流75V~1500Vの範囲で使用する電気機器の電気的安全を確保するための指令です。IoT機器の本体は3.3Vや5Vなど低い電圧で動くものが多く、本体そのものはこの範囲に入らないことがよくあります。一方で、付属のACアダプタや、AC電源を内蔵する機器はこの範囲に入ります。目的は感電や火災などのリスクから使う人を守ることです。なお、RED指令の対象となる無線機器は、動作電圧にかかわらず、RED指令の中で電気的安全の要求を満たす必要があります。
3. EMC指令(EMC: Electromagnetic Compatibility Directive)
EMC指令は、電気・電子機器から発生する電磁ノイズ(エミッション)を抑制し、かつ外部からの電磁ノイズを受けても正常に動作する能力(イミュニティ)を確保するための指令です。IoT製品は、無線通信を行うため、他の機器への電磁妨害を最小限に抑え、また他の機器からの妨害を受けても安定して動作することが求められます。これもRED指令の対象となる無線機器に適用されます。
これらの指令は相互に関連しており、製品の特性に応じて複数の指令への対応が求められます。どの指令が適用されるかを正確に特定することが、CE認証取得の最初のステップです。
CE認証取得に向けた主な試験項目と準備
各指令への適合を示すためには、指定された試験項目をクリアする必要があります。主な試験項目は以下の通りです。
- RED指令関連
- 無線性能試験:周波数安定度、出力電力、占有周波数帯域幅など、無線モジュールの性能が電波法規に適合しているかを確認します。
- 安全性試験:LVD指令に準拠した電気的安全性(絶縁耐力、漏れ電流、温度上昇など)を確認します。
- EMC試験:EMC指令に準拠した電磁妨害(エミッション)と電磁耐性(イミュニティ)を確認します。
- SAR(Specific Absorption Rate)試験:人体が電波を吸収する割合を測定し、健康保護要件に適合しているかを確認します。
- LVD指令関連(RED指令でカバーされない機器の場合)
- 感電保護、絶縁耐力、過熱からの保護、機械的強度、火災に対する抵抗など、電気的安全に関する多岐にわたる試験を行います。
- EMC指令関連(RED指令でカバーされない機器の場合)
- 放射エミッション試験:機器から放出される電磁ノイズが規制値を超えないかを確認します。
- 伝導エミッション試験:電源線などを介して放出される電磁ノイズが規制値を超えないかを確認します。
- イミュニティ試験:静電気放電(ESD)、放射性電磁界(RS)、電気的ファストトランジェント(EFT)、サージなど、外部からのノイズに対する耐性を確認します。
これらの試験は、製品の設計段階から考慮しておくことが重要です。試験で不適合となった場合、設計変更が必要となり、大幅な手戻りが発生する可能性があります。最新の情報は、各国の規制当局や認証機関のウェブサイトで確認してください。
CE認証取得の一般的な流れと期間・費用の目安
CE認証取得の一般的な流れは以下の通りです。
- 適用指令の特定と整合規格の確認: 製品の機能や用途に応じて、適用される指令(RED、LVD、EMCなど)を特定し、それぞれの指令に適合するための整合規格(Harmonised Standards)を確認します。
- 技術文書(Technical Documentation)の作成: 製品の設計、製造、動作、安全性に関する詳細な情報をまとめた書類を作成します。これには、回路図、部品表、取扱説明書、リスク分析、試験データなどが含まれます。
- 試験と適合性評価: 整合規格に基づく試験を行います。自社で試験設備を持たない場合は試験所に依頼します。整合規格を完全に適用できる製品であれば製造者の自己宣言で済むことが多く、整合規格が適用できない無線技術を使う場合などに、第三者機関(Notified Body)による評価が必要になります。どちらに当たるかは製品ごとに確認が必要です。
- 適合宣言書(Declaration of Conformity: DoC)の作成: すべての要件を満たしていることを製造者自身が宣言する書類を作成します。
- CEマーキングの表示: 製品本体、梱包、取扱説明書にCEマークと関連情報を表示します。
認証期間の目安
製品の複雑さや試験内容、試験所の混雑状況にもよりますが、数か月から半年程度を見ておくのが一般的で、それ以上かかることもあります。特に、設計変更や追加試験が必要になると、さらに期間が延びる可能性があります。
認証費用の目安
費用も製品の特性や適用される指令、試験項目によって大きく異なりますが、数十万円から数百万円程度が一般的です。複数の指令への対応が必要な場合や、第三者機関による評価が必要になる場合は、費用が高くなります。追加試験や設計変更が必要になると、さらに費用がかさむ可能性があります。
設計段階からの認証対応が製品化をスムーズにする
試作段階で認証要件を意識せずに進めてしまうと、いざ認証取得となった際に大幅な設計変更を余儀なくされ、時間もコストも無駄になりがちです。例えば、基板のパターン設計や部品配置、筐体のシールド対策などは、EMC性能に直結します。無線モジュールの選定も、RED指令への適合を大きく左右する要素です。
当社、サイコス・ジャパン株式会社では、技適やPSE、そしてCEなどの各種認証取得を、製品の設計段階から支援しています。当社の技術者は、機構設計・電子回路・基板・組み込みソフト・クラウド・量産まで、製品づくりの全工程を一社で手掛けてきた経験があります。そのため、認証要件を満たしつつ、量産性やコストも考慮した設計提案が可能です。
製品開発支援の実績は50件を超え、累計出荷数は200万個以上になります。こうした経験から、どのような製品にどのような指令が適用され、どのような試験が必要になるか、そして設計のどの段階で何を考慮すべきかを把握しています。特に小ロット(数百個〜)からの量産にも対応しており、お客様のニーズに合わせた柔軟な製品化支援が可能です。
CE認証取得は、欧州市場への扉を開くための投資
欧州市場は大きな魅力ですが、CEマーキングはその扉を開くための必須条件です。認証取得は複雑なプロセスですが、適切な知識と計画、そして信頼できるパートナーがいれば乗り越えられます。設計段階から認証要件を意識し、専門家のアドバイスを受けながら進めることが、成功への近道です。
サイコス・ジャパン株式会社では、他社・個人・フリーランスが作った試作品の持ち込みを受け、製品化する仕事も得意としています。欧州市場での製品展開をお考えで、CE認証取得に不安がある方は、まずはお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。試作品をお持ちの方は、写真と経緯のメモだけでも構いませんので、まずご相談ください。