PSE認証の取得手順と費用、IoT機器・電源アダプタで必要な試験項目を解説
せっかく開発した電気機器も、日本市場で販売するには「PSEマーク」の表示が必須です。このマークがないと、どんなに素晴らしい製品でも国内で流通させることはできません。試作段階では意識しなくても、製品化を目前にして「どうすればPSE認証が取れるのか」「費用や期間はどのくらいかかるのか」と頭を悩ませる方は少なくありません。
電気用品安全法(PSE法)は、電気用品による危険や障害の発生を防止するために定められた法律です。この法律に基づき、製品の種類によって必要な手続きや試験項目が異なります。特にIoT機器やその電源アダプタは、その性質上、複数の区分にまたがることもあり、認証取得のハードルが高いと感じるかもしれません。しかし、ポイントを押さえて計画的に進めれば、製品化への道は開けます。
PSE認証の対象となる「電気用品」とは
電気用品安全法では、私たちの身の回りにある多くの電気製品を「電気用品」と定義し、製造・輸入・販売に際して安全性確保を義務付けています。対象となるのは、一般家庭や事業所で使われる100Vや200Vの交流電源に接続して使う製品が大半です。バッテリーで動作する機器本体でも、充電器やACアダプタがPSEの対象となるケースが多く見られます。
電気用品は、その危険度に応じて「特定電気用品」と「特定電気用品以外の電気用品」の2種類に分類されます。この分類によって、製造事業者や輸入事業者が負う義務の内容が大きく変わります。どちらに該当するかで、必要な手続きや費用も変わってくるため、まずは自社製品がどちらの区分に入るのかを正確に把握することが重要です。
特定電気用品と非特定電気用品の違い
特定電気用品は、特に危険性が高いとされる品目で、菱形のPSEマークが表示されます。代表的なものには、ACアダプタ、リチウムイオン蓄電池、電熱器、電動工具などがあります。これらの製品は、国の定めた技術基準への適合だけでなく、登録検査機関による適合性検査(型式確認)を受け、その証明書を取得する必要があります。また、製造・輸入事業者は、自主検査を行い、その記録を保管する義務も負います。
一方、特定電気用品以外の電気用品は、比較的危険度が低いとされる品目で、丸形のPSEマークが表示されます。テレビ、冷蔵庫、LED照明器具などがこれにあたります。こちらは登録検査機関による適合性検査は義務付けられていませんが、国の定める技術基準に適合していることを製造・輸入事業者自身が確認し、自主検査記録を保管する義務はあります。
IoT機器の場合、本体がDC5Vなどの低電圧で動作するものであれば、特定電気用品以外の電気用品に分類されることが一般的です。しかし、そのIoT機器に付属するACアダプタや充電器は、高電圧を扱うため特定電気用品に該当するケースがほとんどです。製品全体でPSE認証を考える際には、それぞれの部品がどの区分に該当するかを個別に判断する必要があります。
最新の分類や具体的な製品の適用については、経済産業省のウェブサイトなどで確認してください。制度は定期的に見直される可能性があります。
PSE認証取得の具体的なステップと必要な試験項目
PSE認証を取得するには、以下の流れで手続きを進めるのが一般的です。製品の区分によって一部省略できる工程もありますが、基本となる考え方は同じです。
ステップ1:事業届出
電気用品の製造または輸入を行う事業者は、事業を開始する前に経済産業大臣へ事業届出を行います。これは、製品の販売責任を明確にするためのものです。届出には、事業者情報や製造・輸入する電気用品の品目、型式などを記載します。
ステップ2:技術基準適合確認
製品が国の定める技術基準に適合していることを確認します。特定電気用品以外の電気用品の場合は、事業者自身が試験設備を整えて自主検査を行うか、外部の試験機関に依頼して適合性を確認します。IoT機器本体であれば、この段階で電磁両立性(EMC)試験や絶縁耐力試験などが行われます。
特定電気用品の場合は、必ず登録検査機関での適合性検査が必要です。この検査では、製品の安全設計、部品の安全性、構造、表示などが詳細にチェックされます。ACアダプタであれば、過電圧・過電流保護、温度上昇、絶縁距離、難燃性といった項目が厳しく試験されます。
ステップ3:自主検査体制の確保と実施
製品を製造または輸入する事業者は、出荷前に必ず自主検査を実施し、その記録を保管する義務があります。この自主検査は、製造ロットごとの品質を保証するために重要です。検査項目は製品の種類によって異なりますが、絶縁耐力、通電、アース接続などの確認が含まれます。検査設備や手順が適切に整備されているかも問われます。
ステップ4:PSEマークの表示と情報保管
技術基準適合の確認と自主検査が完了したら、製品本体にPSEマーク、事業者名、定格などの表示を行います。表示がない製品は販売できません。また、製品の技術基準適合に関する書類(設計資料、試験成績書、自主検査記録など)は、製造または輸入の日から10年間保管する義務があります。
PSE認証にかかる費用と期間の目安
PSE認証取得にかかる費用と期間は、製品の種類、複雑さ、試験機関、そして特定電気用品か非特定電気用品かによって大きく変動します。
費用は、特定電気用品の場合、登録検査機関での適合性検査が必要なため、試験費用が高額になることがあります。一般的なACアダプタであれば、数十万円〜数百万円が目安になることがあります。IoT機器本体が非特定電気用品であっても、外部の試験機関に適合性確認を依頼すれば、数十万円程度の費用が発生する場合があります。
期間は、試験機関での検査に、通常1〜3か月程度かかります。書類準備や再試験が必要になった場合は、さらに期間が延びることもあります。特に海外の工場で製造する場合、検査機関とのやり取りや部品調達に時間がかかることも考慮に入れるべきです。
これらの費用や期間はあくまで目安です。正確な見積もりは、製品仕様を確定させた上で、複数の試験機関に相談して確認することをおすすめします。
設計段階からPSE認証を意識するポイント
製品化をスムーズに進めるためには、設計の初期段階からPSE認証を意識することが最も重要です。後から変更が必要になると、手戻りが発生し、時間も費用も余計にかかってしまいます。
- 安全規格に適合した部品の選定: PSEマーク付きの部品や、UL、CEなどの国際的な安全規格に適合した部品を積極的に採用します。特に電源周りの部品は重要です。
- 安全距離と絶縁設計: 回路基板上のパターン間隔や、筐体内部の部品配置において、感電防止のための十分な安全距離を確保します。絶縁材料の選定も重要です。
- 保護回路の実装: 過電流保護、過電圧保護、過熱保護などの保護回路を適切に設計し、異常発生時に安全に動作するよう考慮します。
- 難燃性材料の活用: 筐体や内部部品には、UL94などの難燃性規格に適合した材料を選定します。特に発熱しやすい部分には注意が必要です。
- 早期の相談: 製品の仕様が固まり始めた段階で、試験機関や認証取得支援の実績を持つ企業に相談します。初期段階でのアドバイスは、後の開発プロセスを大きく左右します。
当社、サイコス・ジャパン株式会社では、長年の製品開発経験から、PSE認証をはじめとする各種認証取得を設計段階から支援しています。機構設計、電子基板設計、組み込みソフト、クラウド、量産まで、製品づくりの全工程を一社で手掛けてきた実績があり、認証に必要な設計変更や試験対応についても、お客様と二人三脚で進めることが可能です。試作品はあるが、製品化で認証の壁にぶつかっている、といったご相談をよく承っています。
まとめ
PSE認証は、日本市場で電気機器を販売するために避けて通れない重要なプロセスです。特定電気用品と非特定電気用品の違いを理解し、製品の特性に応じた適切な手順で進めることが成功の鍵となります。特にIoT機器やその電源アダプタは、複雑なケースが多いため、専門知識を持ったパートナーと連携することをおすすめします。
設計段階から認証要件を織り込むことで、手戻りを最小限に抑え、スムーズな製品化を実現できます。試作品をお持ちの方で、製品化やPSE認証についてお困りの場合は、写真と経緯のメモだけでも構いませんので、まず当社にご相談ください。初回相談は無料で承っています。