はんだ種類の違い徹底解説、鉛フリーと共晶で品質差が出る理由
製品開発を進める中で、試作品が完成し、いよいよ量産へという段階で思わぬ壁にぶつかることがあります。その一つが、実は「はんだ」の選定です。電子機器の心臓部である基板において、部品を固定し、電気的な接続を担うはんだは、製品の品質や信頼性を大きく左右します。特に、環境規制の進展とともに主流となった鉛フリーはんだと、長年使われてきた共晶はんだでは、特性や製造プロセスに大きな違いがあり、これが製品の安定性や量産時の歩留まりに直結します。
共晶はんだと鉛フリーはんだの特性
共晶はんだは、錫(Sn)と鉛(Pb)を主成分とする合金です。約183℃という比較的低い融点と、材料へのなじみやすさ(濡れ性)の良さから、長年にわたり電子機器製造で広く用いられてきました。しかし、鉛の環境負荷が問題視され、2006年以降、EUのRoHS指令(特定有害物質使用制限指令)を皮切りに、多くの地域で電子機器への鉛使用が制限されるようになりました。
これに代わって普及したのが鉛フリーはんだです。鉛を含まず、錫を主成分に銀(Ag)や銅(Cu)などを添加した合金が一般的です。環境負荷の低減という大きなメリットがある一方で、共晶はんだとは異なる特性を持つため、製造現場では新たな課題に直面することになりました。
品質差が生まれる主な理由
なぜ、はんだの種類で製品の品質に差が出るのでしょうか。その背景には、主に以下の点が挙げられます。
融点と熱履歴
鉛フリーはんだの多くは、共晶はんだよりも融点が高く、約217℃〜230℃程度です。このため、はんだ付けを行う際には、より高温での加熱が必要になります。高温での処理は、基板や電子部品に熱ストレスを与える可能性があり、部品の劣化や基板の反り、層間剥離などのリスクを高めることがあります。また、はんだ付け設備の温度プロファイル(加熱・冷却曲線)の厳密な管理が求められ、わずかな設定ミスが不良につながることも珍しくありません。
濡れ性と接合信頼性
はんだの「濡れ性」とは、溶融したはんだが、はんだ付け対象の金属表面にどれだけ広がり、なじむかを示す特性です。共晶はんだは濡れ性が非常に良好で、部品のリードとランド(基板上の接続パッド)にスムーズに広がり、強固な接合部を形成しやすい特徴があります。
一方、鉛フリーはんだは共晶はんだに比べて濡れ性が劣る傾向があります。この濡れ性の違いは、はんだ付け後の接合部に空洞(ボイド)が生じたり、はんだの広がりが不十分で未はんだの状態になったりする原因となることがあります。これらの不良は、電気的な接触不良や機械的強度の低下を招き、製品の長期信頼性に影響を及ぼす可能性があります。
ウィスカの発生リスク
鉛フリーはんだ、特に錫を主成分とするはんだでは、「ウィスカ」と呼ばれる現象が発生することがあります。ウィスカとは、はんだ表面から金属が針状に成長する現象で、隣接する電極間を短絡させ、機器の誤動作や故障を引き起こす可能性があります。ウィスカの発生メカニズムは複雑で、応力や環境条件(温度、湿度)などが影響すると考えられています。このリスクを低減するためには、はんだ材料の選定だけでなく、表面処理や実装後の対策も重要になります。
機械的強度と熱サイクル耐性
はんだ接合部は、電気的な接続だけでなく、部品を基板に固定する機械的な役割も担っています。製品が動作中に温度変化を繰り返す(熱サイクル)ことで、はんだ接合部には膨張・収縮によるストレスがかかります。鉛フリーはんだは共晶はんだに比べて硬く、熱サイクルによる疲労破壊が起きやすい特性を持つ種類もあります。このため、製品の用途や使用環境によっては、はんだ接合部の信頼性評価を十分に行う必要があります。
はんだ選定の現場でのポイント
製品開発において、はんだの種類を選ぶ際には、単に環境規制に対応するだけでなく、製品の特性や製造プロセス全体を見据えた検討が不可欠です。
- 製品の要求品質と信頼性: どのような環境で使用され、どの程度の寿命が求められるかによって、はんだに求められる特性は大きく変わります。民生品と車載機器や医療機器では、求められる信頼性のレベルが異なります。
- 製造コストと歩留まり: 鉛フリーはんだは材料費が共晶はんだよりも高価な傾向にあるだけでなく、融点の高さから設備投資や、不良率の増加による製造コスト上昇につながる可能性があります。量産規模や予算を考慮し、最適なバランスを見つけることが重要です。
- 法規制への対応: RoHS指令やREACH規則など、製品を販売する国や地域の法規制を必ず確認してください。特に輸出を視野に入れる場合は、鉛フリーはんだの使用が必須となるケースがほとんどです。(最新の情報は所管機関で確認してください。)
- 使用部品の耐熱性: はんだ付け時の高温に耐えられない部品を使用すると、部品が損傷したり、特性が変化したりする恐れがあります。部品選定時には、その耐熱温度を確認し、はんだの種類と実装条件を合わせる必要があります。
サイコス・ジャパンでの製品化支援
製品の企画段階や試作後の量産化検討において、はんだ選定のような材料技術の知識は、最終的な製品の品質やコストに大きく影響します。当社では、試作品の持ち込みから製品化までを支援する際、機構設計、電子基板設計、量産製造を一貫して手掛ける強みを生かし、製品の要求品質や量産規模に応じた最適なはんだ選定を含め、総合的な視点から製造プロセスを提案しています。京都市下京区に拠点を置くサイコス・ジャパンは、1990年の創業以来35年間、50件を超える製品開発支援実績と累計出荷数200万個超の経験を通じて、お客様の製品が市場で長く使われるよう、材料選定一つとっても妥協なく検討しています。
まとめ
はんだの選定は、電子機器開発における重要な要素であり、単なる材料選びではありません。鉛フリーはんだと共晶はんだの特性の違いを理解し、製品の用途、要求品質、製造コスト、法規制、使用部品との相性など、多角的な視点から総合的に判断することが、高品質で信頼性の高い製品を生み出す鍵となります。
製品開発の初期段階や、試作品の量産化でお困りの際は、まずサイコス・ジャパン株式会社へご相談ください。初回のご相談は無料で承っています。