製品化に必要な認証の全体像、技適・PSE・CE・FCCはどれが必要か
素晴らしいアイデアが形になり、試作機が完成した。しかし、いざ製品として世に出そうとすると、「認証」という、これまで意識していなかった壁が立ちはだかることがあります。特に電気製品や無線通信を使うIoT機器の場合、この認証取得が製品化の大きなハードルとなりがちです。
「この製品には、技適とPSE、それともCEやFCCも必要なのか?」
「費用はどのくらいかかるのか?」
「どのくらいの期間がかかるのか?」
このような疑問を抱え、製品化に足踏みしてしまうケースをよく見かけます。本記事では、主要な認証の種類とその適用範囲、IoT機器を例にした判定フロー、そして取得にかかる費用と期間の目安を整理します。
なぜ製品認証が必要なのか
製品認証は、消費者の安全を守り、電波環境の秩序を保つために非常に重要です。例えば、電気製品であれば感電や火災のリスク、無線機器であれば他の機器との電波干渉リスクがあります。これらのリスクを未然に防ぎ、製品が特定の技術基準や安全基準を満たしていることを公的に示すのが認証制度です。
国や地域によって求められる認証は異なり、販売する市場のルールに従う必要があります。認証がない製品は、市場への流通が認められず、法的な罰則の対象となる可能性もあります。
主要な製品認証の種類と適用範囲
製品の種類や販売地域によって、必要な認証は大きく変わります。ここでは、代表的な認証をいくつかご紹介します。
技適(技術基準適合証明)
日本国内で無線機器を販売・使用する場合に必須となる認証です。スマートフォン、Wi-Fiルーター、Bluetooth機器、携帯電話回線(LTE/5G)を使うIoTデバイスなど、電波を発する機器が対象です。電波法に基づき、無線設備が国の定める技術基準に適合していることを証明します。総務省が所管しており、指定された登録証明機関で試験・評価を受けるのが一般的です。認証のない無線機器を日本国内で使うことは電波法で禁じられています。
PSE(電気用品安全法)
日本国内で電気用品を製造・輸入・販売する際に義務付けられる法律です。AC100Vのコンセントに直接接続する製品や、ACアダプタ、リチウムイオンバッテリーなどが対象となります。経済産業省が所管しており、製品の区分に応じて「特定電気用品(ひし形PSE)」と「特定電気用品以外の電気用品(丸形PSE)」に分けられ、それぞれ異なる手続きが求められます。いずれも、メーカーや輸入事業者が国が定める技術基準に適合していることを確認し、自己責任で表示を行うことが基本ですが、特定電気用品の場合は第三者検査機関による適合性検査が義務付けられています。
製品本体が低電圧で動作する場合でも、その電源となるACアダプタや充電器がPSEの対象となることが多いです。
CEマーキング(欧州連合:EU)
欧州連合(EU)加盟国に製品を輸出・販売する際に必要な表示です。製品がEUの定める安全、衛生、環境保護などに関する各種指令(LVD指令、EMC指令、RED指令など)の必須要求事項を満たしていることを示します。メーカーが自己宣言を行うことが基本ですが、製品の種類によっては、指定されたノーティファイドボディ(第三者認証機関)による適合性評価が必要となる場合があります。CEマークは認証そのものではなく、製品が指令に適合しているという製造者の責任を表明するマークです。
FCC認証(米国)
米国で無線機器や意図しない電磁波を発する電子機器を販売・流通させる際に、連邦通信委員会(FCC)が定める規制に適合していることを示すものです。無線機能を持つIoT機器はもちろん、デジタル回路を持つパソコンや家電製品なども対象となる場合があります。試験と適合性評価を行い、FCC IDの取得や適合宣言(DoC)などの手続きが必要です。
IoT機器を例にした認証の判定フローと目安
IoT機器は、無線通信機能と電源供給の両方を持つことが多いため、複数の認証が必要になるケースが一般的です。ここでは、基本的な判定フローと、取得にかかる費用・期間の目安を整理します。具体的な製品や機能によって必要な認証は変わるため、あくまで目安として捉え、最新の情報は所管機関や専門機関で確認してください。
判定フローの考え方
- 販売地域を確認する:
- 日本国内のみ → 技適、PSE
- 欧州(EU)へも → CEマーキングを追加
- 米国へも → FCC認証を追加
- 上記以外にも、販売する国ごとに独自の認証が必要になる場合があります。
- 無線機能の有無を確認する:
- Wi-Fi、Bluetooth、LTE/5Gなどの無線機能がある場合:
- 日本:技適
- 欧州:CEマーキング(RED指令)
- 米国:FCC認証
- 無線機能がない場合:原則として技適、RED指令、FCC認証(無線関連)は不要ですが、意図しない電磁波を出す機器としてEMCに関する規制は適用されることがあります。
- Wi-Fi、Bluetooth、LTE/5Gなどの無線機能がある場合:
- 電源方式を確認する:
- AC100Vに直接接続する、またはACアダプタを使用する製品:
- 日本:PSE(本体またはACアダプタ)
- 欧州:CEマーキング(LVD指令、EMC指令)
- 米国:UL認証(任意だが市場要請が強い)、EMC関連規制
- バッテリー内蔵(特にリチウムイオンバッテリー):
- 日本:PSE(バッテリー単体または内蔵バッテリーパック)
- 欧州:CEマーキング(LVD指令、EMC指令)
- 米国:UL認証(任意だが市場要請が強い)
- USB給電など、低電圧DC電源のみで動作し、AC電源部に直接接続しない場合:PSEの対象外となることが多いですが、電源供給元(PCやUSB充電器)側がPSE等の対象となります。
- AC100Vに直接接続する、またはACアダプタを使用する製品:
費用と期間の目安
認証取得にかかる費用は、製品の複雑さ、必要な試験項目、選択する試験機関によって大きく変動します。一般的には、一つの認証あたり数十万円から数百万円程度が目安となります。複数の認証が必要な場合は、その分費用も加算されます。
期間についても同様で、試験の混み具合や製品の改修の有無によって変わりますが、一つの認証で数週間から数ヶ月程度、複数の認証を並行して進める場合でも、全体で3ヶ月から半年以上かかることも珍しくありません。特に、設計に不備があり試験をパスできない場合は、設計変更と再試験にさらに時間と費用がかかります。
認証取得を円滑に進めるためのポイント
認証取得は、製品開発の最終段階で慌てて行うものではありません。設計の初期段階から認証要件を意識し、専門家の知見を取り入れることが、時間とコストを節約する上で非常に重要です。
- 開発初期段階での情報収集と相談:製品の構想段階で、どの市場で販売するか、どのような機能を持たせるかを明確にし、必要な認証について調査します。不安な場合は、認証機関や製品開発の専門家に早期に相談するのが賢明です。
- 認証要件を考慮した設計:例えば、基板設計や筐体設計の段階で、ノイズ対策や安全距離の確保など、認証で求められる基準を満たすように設計を進めます。後からの大規模な設計変更は、手戻りが大きく、費用も時間もかさみます。
- 信頼できる試験機関の選定:実績のある認証機関や試験機関を選び、密に連携を取りながら進めます。
サイコス・ジャパン株式会社では、機構設計・電子基板設計・組み込みソフト・クラウド・量産まで、製品開発の全工程を一社で手掛けています。この経験を活かし、設計段階から技適・PSE・CEなどの認証取得を見据えた製品開発を支援しています。試作品をお持ちで、製品化や認証でお困りの場合は、写真と簡単な経緯のメモだけでも構いませんので、まずご相談ください。初回相談は無料です。