製品の組立性を考えた筐体設計、DFAで量産工数を減らす
素晴らしいアイデアから生まれた試作品も、いざ量産となると、組み立てにくさが大きな壁になることがあります。一つ一つ手作業で組み立てる試作段階では問題にならなかったことが、量産ではコストや品質に直結するからです。組み立てにくい筐体は、作業者の負担を増やし、不良品の発生リスクを高め、結果として製品の量産コストを押し上げてしまいます。
製品開発では、機能やデザインだけでなく、量産時の「組み立てやすさ」を考慮した設計が非常に重要です。
DFA(組立性設計)とは何か
DFA(Design for Assembly:組立性設計)とは、製品の組み立てやすさを考慮して設計を行うことです。量産を前提とした製品づくりにおいて、組立工数を削減し、品質を安定させるための基本的な考え方と言えます。
DFAの目的は、単に部品を組み立てる時間を短縮することだけではありません。作業者のミスを防ぎ、特殊な工具や熟練した技術を必要としない設計にすることで、生産ライン全体の効率と品質を向上させます。初期設計段階でDFAの視点を取り入れることで、後工程での手戻りやコスト増加を未然に防ぐことができます。
部品点数の削減が組立工数を減らす
部品点数が少なければ少ないほど、組み立て工程はシンプルになり、時間もコストも削減できます。部品一つ一つには、製造コストだけでなく、在庫管理コストや輸送コスト、そして組み立てるための人件費がかかります。
部品点数を削減するためのアプローチとしては、複数の部品が担っていた機能を一つの部品に集約する「機能統合」が有効です。例えば、筐体の一部をクリップ形状にして、これまで別の部品で固定していたものを一体化する、といった工夫です。設計の初期段階で、本当にその部品が必要なのか、別の方法で代替できないかを徹底的に検討することが重要です。
ネジの削減と共通化で作業を効率化する
製品の組み立てにおいて、ネジは非常に便利な固定部品ですが、締め付け作業は時間がかかり、専用工具やトルク管理も必要です。ネジを減らす、あるいは種類を共通化するだけでも、組立効率は大きく変わります。
ネジを減らすための設計
ネジを減らす方法として、後述する嵌合(かんごう)設計の活用が挙げられます。また、接着や溶着、カシメといった他の固定方法を検討することも有効です。特に、繰り返し分解する必要のない箇所では、ネジ以外の固定方法を積極的に採用することで、組立時間を短縮できます。
ネジの共通化
どうしてもネジが必要な場合でも、種類をできるだけ共通化することが大切です。異なるサイズのネジや頭の形状が違うネジが混在すると、作業者はその都度工具を持ち替えたり、部品の選別をしたりする手間が発生します。M2、M3といったサイズだけでなく、長さや頭の形状(プラス、トルクスなど)も統一することで、作業効率は向上します。
嵌合設計の活用で組立性を高める
ネジの代わりに有効なのが、部品同士をはめ合わせる嵌合(かんごう)設計です。スナップフィットや圧入、ガイド溝、フックなど、さまざまな方法があります。
- スナップフィット: 部品に設けられた爪(フック)が相手部品の穴にはまり込むことで固定する方式です。工具不要で、ワンタッチで組み立てられるため、組立工数を大幅に削減できます。
- 圧入: 部品同士を無理なく押し込むことで固定する方式です。特に軸と穴の関係でよく使われます。
- ガイド溝: 部品をはめ込む際に、正しい位置に誘導する溝や突起です。組み立て時の位置合わせを容易にし、作業時間を短縮します。
嵌合設計は、部品点数の削減にも寄与し、外観の美しさにもつながることがあります。ただし、分解が必要な箇所での使用や、繰り返し使用する箇所の耐久性には注意が必要です。
誤組防止(ポカヨケ)で品質を確保する
部品の向きを間違えたり、違う部品を取り付けてしまったりといった人為的なミスは、量産ラインで発生すると大きな損失につながります。これを未然に防ぐのが、ポカヨケ(誤組防止)の考え方です。
ポカヨケ設計の基本は、正しい組み方以外はできないようにすることです。
- 非対称形状: 部品を正しい向きでしか挿入できないように、非対称な形状にする。
- ガイド形状: 複数の部品が接続される場合、異なる部品は物理的に挿入できないようなガイドや突起を設ける。
- 色分け: 似たような形状の部品でも、色を変えることで視覚的に区別しやすくする。
こうした工夫は、不良品の発生を減らすだけでなく、作業者の心理的な負担を軽減し、結果的に生産性向上にもつながります。
作業者の手順を考慮した設計
製品の組立性を高めるには、実際に作業する人の視点に立つことが不可欠です。設計者は、図面上で部品が組み上がることを確認するだけでなく、作業者がどのような手順で、どのような工具を使って組み立てるかを具体的にイメージする必要があります。
例えば、部品の取り付け順序を最適化し、奥にある部品から手前へと順番に組み付けるように設計したり、工具がスムーズにアクセスできる空間を確保したりする工夫が挙げられます。また、複数の部品を同時に扱うのではなく、一つずつ確実に組み付けられるような構造にすることも、組立ミスを減らす上で重要です。作業者が部品を掴みやすく、向きを間違えにくい形状にすることも、細かながらも大きな効果をもたらします。
量産を見据えた設計はサイコス・ジャパンにご相談ください
試作段階では問題がなくても、量産に入ると組立性の悪さが顕在化し、コストや納期に大きな影響を与えることは少なくありません。当社では、機構設計から電子回路、基板、組み込みソフト、クラウド、そして量産まで、製品づくりの全工程を一社で手掛けています。
お客様が試作された製品をお持ち込みいただき、DFAの観点も含めて量産を見据えた設計改善を行うことも多くあります。例えば、日本で金型を1型起こす場合、およそ100万円が目安となりますが、この投資を回収するためにも組立性の良い設計は不可欠です。小ロット(数百個〜)からの量産にも対応しており、お客様のアイデアを形にするお手伝いをしています。
試作は成功したものの、量産設計で課題を感じている方は、まずはお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。